ナインス・ゲート
2004年 11月 08日
『ナインス・ゲート』
原題;The Ninth Gate 1999年 スペイン・フランス ニューヨークで、多少汚い手を使いながらも、古書売買をしているコルソは、ある日、古書コレクターであり、得意先の富豪から、中世に書かれ、今は世界に三冊しか存在していないという、禁断の悪魔の書「ナインスゲート(影の王国への九つの門)」の一冊を手に入れたので、その真贋を確かめるための鑑定を、巨額の報酬とともに依頼される。 ヨーロッパにあるという残りの二冊と比較をすれば、その本が贋作かそうでないかが分かるというのだが、コルソが行く先々で、その本の挿絵に描かれた通りの残酷な遣り方で、殺人が行われていき・・・。 悪魔が書いたと言われる古書を巡る、ゴシック・ミステリー。 私がこれを見たのは、まず、何よりも、ジョニー・デップが主役の映画だったからです(笑) ジョニデって、ほんと、こういう、胡散臭い役が似合うんですよねえ(><) 顔の作りとしては、本当に整っている人だと思うんですが、同じ整った顔でも、ジュード・ロウとかとは、醸し出す雰囲気がまるで違って。 怖いはずの映画なんだけど、ジョニデが出ると、どこか、それが単に怖いだけじゃなくなるというか。 『スリーピー・ホロウ』を見ても、分かると思うんですが、彼の役柄が持つ、胡散臭さが、板についていながらも、全く、嫌味がないというか。 それに、どんな非現実的な状況が描かれていたとしても、ジョニデが直面している事態には、嘘臭さが無いんですよね。 そこが、どんな世界であろうとも、その場面に見事に調和して、溶け込んでいるというのは、もう、彼自身の本能的なものなのかも。 たとえば、他の役者さんが演じたら、この役や、このシーンは、どんな風になるんだろうと、ジョニデのあまりに自然な演技を見ていると、いつも思うんですが、きっと、彼以外の役者さんなら、こんなオカルトめいたシーンを生真面目に演じていても、どこか嘘くさくて、しらけちゃうんじゃないかなと。 それだけ、役者が生活している現実から、映画の世界を切り離せずに見てしまう役者さんが、ほとんどなんですが、ジョニデは、その映画がどんな世界であろうとも、見事に「しっくり」きちゃうんです。 そして、彼がいる世界、状況に、見事に観客を引き込んでくれて。 もう、それは、彼が『パイレーツ・オブ・カリビアン』みたいに、海賊であろうが、何だろうが、変わらないんですよね(笑) そんなジョニデは、今回、古書マニアを相手に商売して、金儲けだけを考えている一癖も二癖もありそうなヤバい人。 そんな彼が、武道の達人っぽい謎の美女に守られてしまうんですが、それがまた、「しっくり」きちゃうんですよねえ(笑) 女性に守られるのが、こんなに似合う人もそういないだろうなあ(笑) そういう意味でも、この映画は、主役のコルソにジョニデを起用した時点で、半ば成功したようなものかな、と。 まあ、それを、うまく映画の商業的な成功に持っていけるかどうかは、原作はもちろん、脚本や、編集、その他もろもろが関係してくるのですが。 少なくとも、ジョニデが出ていることによって、この独特のゴシック調の世界を作り出し、観客をその非現実的な世界へと誘う点において、成功していたと思います。 監督ロマン・ポランスキーといえば、『ローズマリーの赤ちゃん』でも有名な監督ですが。 ゴシック・ホラーが得意というよりも、ゴシック的な美を追求する人なんじゃないかなあと思います。 やっぱり、ああいう世界って、アメリカのロスの健康的な太陽の下で育った人間がイメージして作れるとも思わないし、やはり、血の中にある「昏さ」みたいなものが、根底にないと、出てこないものなんじゃないかなあ、と。 画面の端々で、監督の美的感覚が、とても生かされていたというか、妖しいほどの美しさ(それは、恐怖と紙一重のものかも知れないですが)が演出されていたと思います。 ストーリーとしては、まあ、反応もさまざまなようですが。 決して、一流映画じゃないんだけど、結構、こういう二流っぽい映画も私は好きですね((^^;; あと、この作品を見るキッカケになったのは、実はジョニデだけじゃなく、古書を扱う話だったから、ということ。 日本の古書コレクターとは、欧米のコレクターはかなり違うと思うのです。 やはり、向こうでは、中世の頃から、立派な装丁のついた「本」が存在しているわけです。 現存する物が少ないそれらを求めて、古書コレクターが出すお金は、一般人の想像をはるかに超えています。 今回の映画にも出てくる「古書」は、いわゆる、そういう類のもの。 そんな古書を巡って、どんな映画になっているんだろうという興味もあったのでした。 古書を扱うミステリーといえば、古書好きが高じて、自分も古書店の主人になってしまう、元・警官が主人公のミステリ、ジェフ・グリーンナウェイ・シリーズの『死の蔵書』、『幻の特装本』が有名です。 本が人を狂わせるというのは、一見、馬鹿げたことのようにも思えますが、希少価値の高い古書だと、話は全く違ってきます。 それが殺人の理由にも、十分になりえるわけです。 そして、また、アメリカでの古書マニアたちの世界を描いたエッセイとしては、今までに、何度もここで挙げたことのある、『古書店めぐりは夫婦で』『旅に出ても古書店めぐり』でしょうか。 これは、古書マニアの世界を覗くには、とてもオススメで、楽しい本なのです★ 目からウロコの世界というか。 この本については、ホームページのブックレビューでも、詳しく書いています。 そんなわけで、もともと、古書がまつわるものに興味もあったので、今回の映画は、そういう観点でも私は楽しんでみたのでした。 ◆Amazon ナインスゲート デラックス版Ninth Gate
by akiko_mama
| 2004-11-08 18:30
| 映画
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