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トプシー・ターヴィー
『トプシー・ターヴィー』
原題;TOPSY-TURVY
1999年・イギリス

19世紀末のロンドン。
サヴォイ劇場では、人気を誇る数々のオペレッタ(喜歌劇)が上演され、中でも、劇作家のギルバートと作曲家のサリヴァン、ギルバート&サリヴァンによる作品が人気を博していた。
だが、満を持して発表した新作は「マンネリ」と酷評される。
その上、サリヴァンが、これ以上、喜歌劇の作曲はしたくない、正統派の正歌劇へ転向したいと告げる。
人気劇作家コンビを失いたくない劇場側が止めに入るが、サリヴァンは納得せず、二人の間に生じた不和は解消されないままだった。
だが、そんなとき、妻に誘われたギルバートは、ちょうど開催中だったロンドン万国博覧会を訪れる。
そこで、彼は日本館を目にし、初めて触れる日本の文化、キモノなどに触発を受け、それまでとは全く違った、新たなオペレッタ、ギルバート&サリヴァンの最高傑作とも言われる『ミカド』の製作に取り掛かる・・・。

タイトルの『トプシー・ターヴィー』は、「めちゃくちゃ」という意味。
このタイトルだけをTV欄で見て、てっきり、イタリア映画か何かかな?と最初は思ってました。
だから、見るつもりはなかったのですが、ふと、なにげなく、TVのチャンネルを回していると、なにやら、興味を惹かれるような映像が映っていて。
でも、まだその時点では、オペラのシーンのようだったので、やっぱり、イタリア映画かな~と思っていたのですが、よく聞いて見ると、聞こえてくるセリフはイギリス英語。
衣装などから、どうも世紀末の音楽映画っぽいものみたい、という推測だけで、内容もよく分からないまま、途中からでしたが、何となく気になって、録画しておいたのでした。

そして、翌日、録画した映画を見ていると、(最初は、どの髭のおじさんが、いったい誰なのかすら分からなかった(笑))出てくる名前がギルバートとサリヴァンだし、これは、もしかして・・・ということで、ようやく、ギルバート&サリヴァンについて描いた映画だと分かったのでした((^^;;

日本では、特に、オペラに興味のある人以外にはあまり知られていない名前かも知れませんが、ギルバート&サリヴァンは19世紀末に、イギリスで人気を博した喜歌劇作家なのです。
かく言う私も、実は、イギリスに行くまで、彼らのことを、はっきりとは知りませんでした。

イギリスにホームステイ中、日本にエアメールを送るために、よく郵便局で切手を買っていたんですが、イギリスの郵便局では、とにかく、いつでも、何種類ものカラフルな記念切手が置いてあり、目を楽しませてくれます。
その中で、ある日、買った切手シートの絵柄が、どうも、いくつかの劇のシーンをイラストに仕立てたシリーズになっていました。
それらは、みな、ギルバート&サリヴァンの作品だったようで、いずれの切手にも彼らの名前が書かれていたのですよね。
私は英文科を出たわけではないので、イギリスの文学や演劇には全く詳しくないんですが、このうちの『ミカド』っていうのは、何となく名前を聞いたことがある気がするし、ギルバート&サリヴァンというのは、シェークスピアほどじゃないにしても、庶民に人気のあった劇作家のことじゃなかったかな、という認識で、そのときはいたのでした。
それ以来、たびたび、耳にする名前だとはいえ、今まで、特別、気になることもなかったですから、わざわざ、調べようともせず((^^;;
それが、12年経った今になって、やっと(?)、ギルバート&サリヴァンについて、詳しく知ることが出来たわけです。
だから、途中から見たせいで、この映画の内容がやっと掴めたときに、私の頭に思い浮かんだのは、ああ、あの切手の図柄になっていた劇作家の人たちのことね!でした(笑)

前置きが長くなりましたが、そんな個人的な思い出もありつつ、この映画を見たわけですが。
特に、大きな進展や流れがあったり、起承転結が明確になっていたりする映画じゃないのに、何故か目が離せない、そんな映画でした。
もちろん、アカデミー衣装デザイン賞を受けたという、当時のイギリスの富裕階級の衣装、そして、『ミカド』に出てくる衣装は素晴らしかったのですが。
(ちなみに、この映画は、衣装とメイキャップでアカデミー賞を受賞し、その他、受賞すらしませんでしたが、脚本賞をはじめ4部門にノミネートされていたそうです)
作中では、もちろん、当時、人気を博したというギルバート&サリヴァンの幾つかのオペレッタが、シーンに盛り込まれるわけですが、当時の喜歌劇とは、こういうものだったのかとか、こんな階級の人たちが見に来ていたのかとか、客席やオーケストラ・ピットの様子、そして楽屋の様子まで、事細かに描かれています。
また、むしろ、興味深いのは、一つの劇を上演するまで、そして、それを作り上げるまでの、劇作家と作曲家の葛藤、俳優たちの楽屋裏での苦悩など。
どの人物も、とても深く人物像が掘り下げられていて、悲喜こもごも、細やかな感情の機微が、見る者を飽きさせないのですよね。
決して有名な俳優が出ているわけではないのですが、どの俳優の演技も味わい深くて、素晴らしかったです。
そしてまた、映画全体を彩る19世紀末のロンドンの雰囲気もたっぷりで、イギリス好きには、とても面白く、興味深い映画だと思います。

この映画で大きな意味を持つオペレッタ『ミカド』は、遠い未知の国である「日本」が、ロンドン万国博覧会で当時のイギリス人に、どんな影響を与えたかを知るのに、とても面白い材料です。
こんな風に日本が「誤解」されていたのか、とか、こんなに興味を持ってくれていたのか、とか、現代の私たちにとっては驚くことばかりで。
当時の彼らが、何とかして、日本を知ろうとする努力が見えてくるのですよね。

決して、スペクタクルな映画じゃないけれど、淡々と進む映画の中にも、それぞれの人物に静かなドラマがあって。
まさに、地味ではあるけれど、佳作だと思います。
もちろん、この映画を見たことで、ギルバート&サリヴァンが、今まで以上に、少し身近に思えるようになったことも確かです★

ところで、ギルバート&サリヴァンの作品は、荒唐無稽なオペレッタですが(それが喜歌劇というものなのかな?)、『ミカド』の他にも有名な作品が幾つもあって。
知っている方は知っているのでしょうが、たとえば、『ザ・ホワイトハウス2』の第5話で、ホワイトハウスの法律顧問エインズリーが歌っていたのが『軍艦ピナフォア』だったのは、覚えていたのですが、それも、ギルバート&サリヴァンの作品だったとは。
(今回、初めて、その二つが頭の中で繋がりました((^^;;)
あと、『ペンザンスの海賊』もギルバート&サリヴァンの有名な作品の一つらしいですが、そこに出てくる海賊の言葉は、『パイレーツ・オブ・カリビアン』での台詞回しにも使われているとか。

この『トプシー・ターヴィー』は、残念ながら、日本未公開で、今年に入ってNHK-BSで二度、放映されただけのようです。
イギリス、特にビクトリア時代の風俗や衣装に興味のある方にはオススメですヨ。
(もちろん、それ以外の方にも★)
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by akiko_mama | 2004-11-12 19:59 | 映画