史上空前の論文捏造
2005年 06月 30日
『史上空前の論文捏造』
(NHKーBSドキュメンタリー) 私がこの番組を見たのは一昨日でしたが、実際は、昨年の10月に放映されたもの。 そして、6/13に行われた、カナダの「バンフテレビ祭」で、ロッキー賞「科学・自然部門」を受賞した作品とのことでした。 受賞記念で放映になったのですね。 内容は・・・ 最先端の科学界において、29歳という若さで、次々に「ネイチャー」や「サイエンス」といった一流誌に論文が掲載された、ヘンドリック・シェーンという科学者の話です。 超伝導という研究分野で、それまで、日本人の科学者が持っていた記録を大幅に塗り替えた研究結果を発表し、一躍、有名人となりました。 彼の論文に追随する形で、世界中の科学者が、同じ結果を得ようと、高価な研究器具を買い集め、何年もかけて、実験に取り組みますが、誰一人として、シェーンと同じ結果を出せた者はいませんでした。 シェーンの論文には、世界的に権威ある有名な教授が共同研究者として名を連ねていたため、その論文が捏造されたものではないかと、思うものは誰もいなかったのです。 逆に、シェーンは神の手を持っているのではないか、とまで囁かれていたほどでした。 しかし、シェーンが一流誌に次々と発表した論文は、ほとんどが捏造だったことが、やがて、発覚します。 しかし、その責任を取ったものは、誰もいませんでした。 若き一人の科学者による、論文捏造によって、何年も踊らされた世界中の科学者たち。 医学や生化学とは違い、急増している論文捏造に対応する機関は、科学には、まだ存在していません。 最先端の分野で、誰がどうやって、真実を見極めるのか。 これからの大きな課題が突きつけられたドキュメンタリーでした。 *********** これを見ていて、もしかして、研究者って・・・バカ?と思った私に、罪はないと思うのですが。 それほど、画期的な実験結果が発表され、熱狂的な歓迎を受けたということですが・・・ 実際、日本の某公立大学の研究室では、シェーンの実験を追試するために、1500万円の機械を新たに購入したというのです。 その論文がウソだとも思わずに。 それが、企業の研究所なら、それは企業のお金だから、問題ないと思うのですが・・・ 公立の大学の研究費は、税金なのだから、そんな無駄使いを、あの男のためにしたのか~っ(><)と、思ってしまいました。 ただ、半年以上、実験をやり直しても、同じような結果が出ないと分かり、そこで、もし、シェーンの論文が捏造では、という疑惑を持ったとしても、そう告発するには、的確な論拠がないとダメだと言うのです。 それで、世界中の研究者が、もしかしたら・・・と思いながらも、決定的な証拠がないまま、野放しにされ、次々と、ウソの論文が世界にバラ巻かれていったというわけです。 共同研究者が有名な人だったから、あの実験にウソはないだろうと思った、とほとんどの人が語っていました。 しかし、あの事件後、世界で初めて、NHKのインタビューに答えたという、その教授は、共同研究というのは、そこまでは責任を負うものではない。実験結果は本人だけが責任を負うものであり、共同研究者とはいえ、踏み込めない領域があるのだ、という自らの意見を述べていました。 つまり、他の研究者たちが信頼を持っていた「ブランド」は、その本人に、そんなつもりなんて、最初から全然ないよ~、とかわされてしまったわけで。 じゃあ、捏造した本人以外に、誰が、その実験がウソだと見抜き、チェックできたのか。 共同研究者の教授じゃなければ、論文を掲載した一流の雑誌社か。 結局、どこも、そんなチェック機能を持ってはおらず(また、するつもりもなく)、ああいう形で、垂れ流されてしまったわけです。 じゃあ、この論文捏造で、果たして、得をしたのは誰だったのか。 有名になったシェーンか。 それとも、彼と、あの有名な教授が勤めていた、ベル研究所を保有し、シェーンの新発見に株価上昇を期待した某企業か。 一方で、損をしたのは、世界中の科学者たちというのは言うまでもありません。 彼らの研究に要した時間やお金、労力を、全て、捏造された論文が奪い去っていたのですから。 研究者という、未知の世界に挑む、高い能力の持ち主たちが、あまりに簡単に踊らされてしまった現実が浮き彫りにされていて、滑稽なカンジすらありました。 なんだかなー((^^;;というか。 ************************ 一方で、最初は海外製作のドキュメンタリーかと思うような作りだったのですが、途中、見ていて、NHKで製作したようだと分かり、ちょっとオドロキでした。 やはり、ドキュメンタリーの作り方は、まだまだ、海外には及ばないんですよね。 NHKは、その切り口や視点が、どうも、かたすぎて。 しかし、このドキュメンタリーは、おお、日本のドキュメンタリーもここまで来たか!と思わせてくれる作り方をしていました。 何も、調べたことや、インタビュー内容を、そのまま羅列すればいいってものじゃないんですよね。 ちょっと、これからのNHKのドキュメンタリー部門にも期待かな、と思いました。 ところで、この「ロッキー賞」の「ファミリー青少年部門」には、『ようこそ先輩』が選ばれていたのですが。 写真家の長倉洋海さんの回だったのですが、これも、とてもよかったです~。 (先週、再放送を見たばかり)
by akiko_mama
| 2005-06-30 10:22
| TV
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