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カテゴリ:ミステリ( 2 )
死より蒼く
『死より蒼く』
フィオナ・マウンテン著(講談社文庫)
原題;PALE AS THE DEAD

eS!BOOKSのほうにも書いたのですが、この本はズバリ、表紙を見て、買ってしまったのでした((^^;;
もちろん、買う前には、中も確認しましたけど。
この表紙がイメージだけでなく、ちゃんと、ラファエロ前派が関わったミステリだと知り、ふらりと入った本屋で、そのまま衝動買いしてしまいました★

簡単なストーリーはeS!BOOKSに書いたので、ここでは、その表紙のことなどを。
表紙は、ジョン・エバレット・ミレイの『オフィーリア』
シェークスピアの『ハムレット』に題材を取った幻想的な絵です。
恋人のハムレットが父親殺しの罪を犯したと知り、狂気に陥ったオフィーリアが、恍惚とした表情で、川面をたゆたう姿を美しくも儚く描いた絵です。
有名な絵なので、それとは知らなくても、目にされた方も多いのではないでしょうか。
(本書では、この絵が大きな意味を持ってくるのですが、イギリス本国で出版されたときの表紙には、使用されていません。それを思うと、日本の出版社は太っ腹! でも、絶対、日本人が好きそうな絵なので、効果絶大ですよ(><))

ところで、私がこの『オフィーリア』の絵を初めて見たのは、ロンドンのテート・ギャラリーでした。
同じスペースには、ロセッティの『プロセルピーナ』や、『ベアータ・ベアトリックス』もあり、この一角は、特に私のお気に入りの場所でした。
確か、数年後にも、また、大好きなこれらの絵が見たくなって、ロンドンへ行ったときにも、わざわざ、テート・ギャラリーまで足を伸ばしたほど。
これらの絵は、ラファエル前派と呼ばれる、イギリスの19世紀半ばの画家たちによるものです。
ロセッティは、デザインでも有名なウィリアム・モリスとも深い関係があり、ラファエル前派の画家たちのモデルとなったモリスの妻ジェニーを巡り、複雑な愛憎劇を繰り広げました。
このグループは、若い芸術家たちによって結成された、秘密結社的な色合いの濃いものだったので、現代でも、彼らのその才能の高さと同時に、ミステリアスなグループ内での交流が大いに注目されています。
その辺りのことに、以前から興味もあったので、今回、このミステリーが、ラファエル前派にも関係があると知り、興味津々で読んでみることにしたのでした。

実際、本書は、これらの幻想的な絵のイメージそのままに、繊細な描写が、とても女性らしい作品でした。
そして、主人公ナターシャの、系図学者としての調査手法も詳しく書かれていて。
全く未知の世界だったので、資料を駆使すれば、こんな風に何世代にも渡って、系図を辿っていくことが出来るんだと、驚きで一杯でした。
英国図書館などに行く描写もあり、古い時代の資料も事細かに記載されたものが、これだけ残っているという時点で、まさに、イギリスならでは、というか。
日本では、ここまで調べようと思っても、明治に入ってから戸籍制度が出来るまで、こんなに詳しい資料は無いだろうし、あえて言えば、寺の過去帳くらいかなあと。

ナターシャが自宅コテージのあるコッツウォルズを車で走り回ったり、ロンドンと電車で行き来したりする描写を読んでいても、行ったことのある場所の記述を目にすると、その時の記憶が、ふと呼び覚まされたり。
そういう意味でも、個人的には、とても楽しめた一冊でした。
特に、イギリス好きの方には、オススメかな。

主人公ナターシャの性格も、きっぷが良くて、好感が持てますよ。
彼女が思ったことや、言ったことが、あまりに的確で、思わず、そうそう、と頷いてしまうこともあったりして。
一人暮らしのナターシャにはアイリッシュ・セッターのボリスが、唯一の同居人(?)で、彼との心温まる交流も描かれています。
朝の二時、キッチンで一人、こんな時間に話し相手がいればいいのに、と別れた恋人を思い出し、寂しく思うナターシャの前に、ボリスが現われて、大丈夫なの?と見上げてくれるんです。(こんな犬、私も欲しい!(><))

「時々、自分のことをいちばん理解してくれていて、何があろうとも自分を愛してくれるのは彼だけだとナターシャは思う。」

本書では、ナターシャの過去についてのこと、家族との関係なども絡めて書かれていて。
系図学仲間もいて、近所には親しい友人夫婦もいるけれど、やはり、どこか、自分が生まれ持つ寂しさを紛らわしきれないでいるナターシャに、共感を感じながら読み進めていけました。
イギリス本国では、ナターシャを主人公にした新作も発表されているとか。
ぜひ、次作も読んでみたいものです。


あとは余談ですが、ちょっと、本書で気になったこと。
訳者さんが若手で(?)、こういう言葉遣いをしてしまうのか、30代半ばの作者による原文がそうなのか、「チョー重要」とか「う~んと」とか、「もしも~し?」とか、ヤングアダルトや、今、人気のライトノベルじゃないんだから、という訳文が、どうにも、気になりまして(><)
たとえ、くだけた英語の原文だったとしても、作品に漂う緊張感が一気に抜けてしまうような言葉遣いはやめて欲しい、と思うのですが((^^;;
特に、他の部分の描写や文章が、結構、好みだったりするので、余計に残念で・・・。
あと、「行かれる」っていう言葉を最近よく、巷でも見かけるのですが、これも本書で使われていました。
どうして「行ける」じゃダメなんだろう???と、以前もこの言葉を見るたびに、不快に思っていたのですが。
「行く」を五段活用した「行ける」が語法的には正しいのであって、「行かれる」っていうのは、いtったい、何活用?
(スーパーでよく聞く、「●●円からお預かりします」もそうですが、間違った言葉遣いには、すぐに拒否反応が出てしまうのです・・・)
しかし、それがついに、海外ミステリーでも使われてしまうとは。
大手出版社だと、校正部がしっかりしているから、言語や用語の使用に関して、余計なお世話というほどに、かなり厳しいチェックが入ると聞いたことがあるのですが、講談社さんの校正部は、こういう言葉の使い方も許してしまうことにしたのかなあ(><)
やはり、単語力だけでなく、文章力も大いにモノを言うはずの翻訳者さんたちには、せめて、正しい言葉使いをして欲しいと、切実に思ったのでありました・・・。
まあ、本書では、個人的に、これら数ケ所が気に障っただけで、あとは、かなり上手い訳をつけているので、すんなりと読むことは出来たのですが。


★ところで、上のリンクからは、テート・ギャラリーの各図版に飛べます。
本書にも、これらの絵が出てきていますが、別にネタバレにはなりませんので。このミステリーに関心のある方もない方も、私の大好きな絵を、一度、ぜひ、見てみてくださいね。

ウォーターハウスの『シャーロットの娘』についても、本書では出てきていたので、リンクしてみますね。
この絵も、結構、有名なのでは?
テニスンによる、アーサー王物語を基に書いた詩のイメージから、小船の上の美しい少女が描かれた作品です。ランスロットに恋をしてしまった少女の悲しい運命が、キャンバス全体から漂ってきます。


★作者であるフィオナ・マウンテンのHPもあります。
この作品のイメージそのままのサイトとなっています。
本書にまつわるコーナーもあって、より、作品を楽しめますよ。
http://www.fionamountain.com

★本書『死より蒼く』の幻想的なショート・ムービーはこちら
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by akiko_mama | 2004-11-26 23:05 | ミステリ
警視の死角
『警視の死角』
デボラ・クロンビー著(講談社文庫)

この文庫本が出たことは以前から、本屋で見て知ってました。
買う気もあまり無かったので、ずっと、シリーズで出てるんだなあ、ぐらいの認識しかなかったのですが。
それが、一転して、買ってみたキッカケというのが、なんと、『ドラキュラ』でした。

まず、今、『ヴァン・ヘルシング』という、ヒュー・ジャックマン演じるモンスター・ハンター(?)が、ドラキュラや狼男と対決するアクション映画が上映されてますが。
先日、その新聞予告だったかを見て、ふと、ドラキュラの製作メモを、読みたくなったのですよね。

その後、驚くほど、多くの映画や小説に影響を与えていく、ブラム・ストーカーによるドラキュラ伯爵が、どのようにして、ああいった属性(?)を持っていったか、そして、ストーリーの骨子をどうやって作っていったか、という直筆のメモがちゃんと、アメリカのある街の博物館内の図書館に残っていて、申請さえすれば、誰でも(!)見ることが出来るのです。
そして、それを、わざわざ見に行って、どんなものだったか、目的はそのメモだけなのに、図書館に入るやいなや、その由緒ある建物内部について、いかに長々と案内されたか、を書いてくれているのが、『旅に出ても古書店めぐり』という、趣味の古書収集についての面白いエピソードをエッセイに書き綴ったゴールドストーン夫妻なのでした。

なので、そこの部分を読みたくて、久しぶりに、その『旅に出ても古書店めぐり』を読み返していたのです。
何度読んでも驚くのが、『ドラキュラ』の生みの親であるブラム・ストーカーは、それまで小説家でも何でもなくて、十九世紀末の当時、ロンドンではものすごく有名だった、役者として初めてナイト爵を授与されたという名士、の単なる付き人でしかなかったのですよね。
だから、まさか、後世において、その役者の名前よりも、付き人の名前が世界的に有名になるなんて、当時の人は考えてもいなかったのではないかと。
(そんなことを当時のロンドンで話したりしたら、一笑にふされるか、頭がおかしんじゃないかと言われるだろうと、ゴールドストーン夫妻は書いてます)

そして、その『旅に出ても古書店めぐり』の中で、夫妻は、エドガー賞の授賞式というものに、知り合いの古書店主に誘われて、初めて出席することに。
好きな作家を間近で見られるチャンス!とばかりに、着飾って、会場である高級ホテルへと出かけるのですが・・・。
その顛末は、本で読んで頂くとして、ちょうど、その年のエドガー賞にノミネートされていたのが、この『警視の死角』だったのです。(いや、長い経緯でした・・・)

『警視の死角』の紹介として、『旅に出ても古書店めぐり』の中で書かれていたのが、ブルームズベリー・グループに関係したミステリだということ。
ブルームズベリー・グループといえば、ヴァージニア・ウルフが一番、有名かもしれないけれど、それぞれに芸術性溢れる知的集団でありながら、むしろ、他に類を見ない、仲間内の「関係」の多さで有名のようですが。
その辺の詳細なども、『旅に出ても古書店めぐり』には書かれていて(ブルームズベリーに属していた作家たち、ヴァージニア・ウルフを含めて、の本もゴールドストーン夫妻は集めているので)、このカルト的集団にも興味も持っていたのです。
それで、ブルームズベリーと関係があるミステリというのなら、ちょっと読んでみようかなと思って。

本の紹介については、eS!BOOKSのほうに書いたので、こちらでは書きませんが。

でも、ああ、こういうミステリもありだな、と思って。
なんだか、少年が捨て犬だった子犬を庭でぎゅっと抱きしめるシーンでは、ほろりと来てしまいそうになりました(><)
(犬に弱いんだな、要するに・・・)
ミステリとしての謎解きも、もちろんあるんだけれど、そこで生きている人たちの、それぞれの悩みとか、苦しみとか(大人だけじゃなく、少年も含めて)、それらのディティールが細かに描かれている辺りが、ああ、こういうのも好きだなと。

現在、シリーズは七作出ているみたいです。
最近、読みたいミステリが本当に少なくて、今年は不作だなあ、と思っていたところだったので、このシリーズを、あと六冊も読めるなんて、ちょうど良かったかな?

◆『警視の死角』のブックレビュー(eS!BOOKS内)

◆『旅に出ても古書店めぐり』のブックレビュー(eS!BOOKS内)
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by akiko_mama | 2004-09-09 09:09 | ミステリ