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めぐりあう時間たち
『めぐりあう時間たち』
原題;The Hours
(2002年・アメリカ)

1923年。
病気療養のために、ロンドンから離れた郊外、リッチモンドに移り住んでいた、作家のヴァージニア・ウルフは、新作『ダロウェイ夫人』の執筆に取り掛かろうとしていた。
「・・・ミセス・ダロウェイは言った。花は私が買ってくるわ」
1951年。
ロサンゼルスの住宅街で、妊婦のローラ・ブラウンは、夫の誕生日の朝をベッドの中で迎えた。手元には、読みかけの『ダロウェイ夫人』。
2001年。
ニューヨークのアパートメントで、『ダロウェイ夫人』と同じ名前を持つクラリッサは、賞を受けた詩人の友人、リチャードの受賞パーティを企画する。エイズに冒されたリチャードは、暗い部屋で、一人、世捨て人のような生活をしていたが、クラリッサにとっては、かつて愛した人だった。

三つの違う時代、三つの違う場所で生きる、三人の女性の物語。
ヴァージニア・ウルフの作品、『ダロウェイ夫人』で描かれたのは、主人公がパーティを開こうとする、ある一日の出来事。
それと同様に、この映画でも、三人の女性の、たった一日の中の、エピソードや想いが重ねられ、時を越え、それぞれの時間が流れていく。

ヴァージニア・ウルフには、ニコール・キッドマン。
ローラには、ジュリアン・ムーア。
クラリッサには、メリル・ストリープ。
原作もピュリッツアー賞を受賞したベストセラーだそうですが、この映画も、数ある賞を受賞し、特に、主要9部門でノミネートされたアカデミー賞では、ニコール・キッドマンが最優秀主演女優賞を受賞しています。

当初のイメージでは、もっと軽いストーリーかと思いきや、すごく観念的で、思索に満ちた物語になっていました。
精神を病み、執筆活動に携わりながらも、どこか苛立ちを押さえきれない、ヴァージニア。
いつも華やかで、気高い美貌のニコール・キッドマンが、こんなに、野暮ったく、見かけが少しだらしない、イギリス人女性を上手く演じるとは、正直、驚きでした。
(こういう雰囲気の女性は、イギリスでよく見かけます)
ヴァージニア・ウルフ本人の写真にもとても似ているし、なによりも、神経質そうな、芸術家独特の雰囲気がとても上手く表現されていて。
正気と狂気の狭間に立ち竦み、死への微妙な揺れを常に感じさせる女性。
もう、アカデミー賞受賞も納得、の演技でした。

以前から、ヴァージニア・ウルフも在籍した『ブルームズベリー・グループ』に興味もあり、先日、映画『オルランド』を見たこともあって、彼女の本も読んでみようかなあ、と思っていたのですが、(でも、近所の本屋には、『オルランド』が無かった・・・(><))やっぱり、本気で、読んでみたくなりました。

それぞれの時代に、時や場所は違っても、女性の幸せとは何なのか、生きることとは、どういうことなのか、平凡そうに見える女性の一日の時の中に、湧き上がる感情や、迷いを丁寧に描いた傑作だと思います。
ぜひ、女性に、一人で見て欲しい、そんな作品ですね。

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◆『めぐりあう時間たち』 オフィシャル・サイト
映画の中で流れる、しっとりとしたピアノのテーマ曲も素晴らしかったです。
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by akiko_mama | 2005-05-26 09:48 | 映画
エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事
『エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事』
原題;The Age of Innocence
(1993年・アメリカ)

ニューヨーク。
1870年代初頭。
弁護士のニューランドは、ニューヨーク社交界の人々が一同に集ったオペラの桟敷席で、婚約者のメイと同席していた女性に目を奪われる。
彼女は、メイの従姉妹であり、ニューランドにとっては幼馴染であるエレン・オレンスカ伯爵夫人だった。
ヨーロッパで伯爵と結婚したエレンだったが、伯爵と不仲となり、離婚を要求したまま、ニューヨークに単身戻ってきていたのだった。
その晩以降、社交界の話題は、もっぱら、エレンのスキャンダルで、もちきりとなった。
メイの一族は、世間の外聞を気にして、エレンに離婚を止めさせようと、ニューランドに説得に行かせる。
だが、どこか寂しげな眼差しをエレンに見出していたニューランドは、婚約者がいる身ながらも、自分が次第に、エレンに惹かれていくことを自覚する。
その自由な意思や自分を偽らない態度から、エレンは、保守的な社交界の人々に見限られていく。
正直に、自分のことを思ってくれるのはニューランドだけだと、エレンには分かっていた。
そして、ニューランドとエレンは、密かに、愛を育み、逢瀬を重ねる。
だが、それは、相手に触れることさえ許されない、逢瀬だった・・・。

監督は、マーティン・スコセッシ。
もともと、以前、スコセッシ監督についての番組を見て、この映画に興味を持ったのでした。
ニューランド役は、『ギャング・オブ・ニューヨーク』での凄まじい悪役ぶりを、どうしても思い出してしまう、ダニエル・デイ・ルイス。(でも、今作では、少し優柔不断な弁護士役でしたが)
エレンには、ミシェル・ファイファー。
そして、ニューランドの婚約者メイには、ウィノナ・ライダー。

当初、その衣装から、てっきり、ヨーロッパのお話かと思っていたのですよね(笑)
借りてきてみたら、本当は、19世紀アメリカの上流階級のお話ということで。
少々、ガッカリしながらも、まあ、いいかと見ていたのですが・・・。
やはり、ヨーロッパの社交界とは違うのか、アメリカの上流階級のお宅は、とても雑多なカンジ。
高級品が並べられているのだけれど、全体に、品があるとは言えないというか。
わざと、当時の、そういう面を出しているのかなあ、と思いますが。

スコセッシ監督といえば、やはり、ニューヨークがまだ、毎日、船で運ばれてくる移民で溢れかえり、市民たちが勢力争いを繰り広げていた当時の様子を生々しく描いた、『ギャング・オブ・ニューヨーク』ですが、この『エイジ・オブ・イノセンス』にも、まだ、都会とは到底言えなかった頃のニューヨークが描かれています。
ハイド・パークの周囲と言えば、今は、高級アパートメントが優雅に立ち並んでいる住宅街ですが、そこが、当時は、十字路になっている広い道だけが続いていて、そこに、たった一軒の大きなお屋敷だけが、ぽつんと建っている、だだっ広い場所だった、という、その光景にビックリ。
今では、そんな面影すらないですが、歴史の浅い、アメリカの歴史をその短いショットが語っているのですよね。

「ここは自由の街、ニューヨークなのに」というエレンの言葉とは裏腹に、ニューヨーク社交界の厳格な考え方や、狭い物の見方などで、上流階級の人々が、優雅に振舞いながらも、実は、慣習や道徳観に、がんじがらめになっている様が、とても象徴的に描かれています。
実際、婚約者がいるのに、人妻と浮気してしまう男の話だったのか・・・と思いながら、見ていた前半は、少々、眠くなってしまって、もう、後半を見るのはやめようかなと思っていたのですが。
しかし、本当に面白くなるのは、そこからでした。

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by akiko_mama | 2005-05-25 08:59 | 映画
ヴァン・ヘルシング
『ヴァン・ヘルシング』
原題;Van Helsing
(2004年・アメリカ)

近代へと向かい始めた19世紀のヨーロッパ。
ローマ・バチカンの地下にある秘密組織から命を受けたヴァン・ヘルシングは、日夜、闇に蠢くモンスターたちと闘っていた。
彼は、自分が何者であったのか、その記憶の全てを失っていた。
自らの過去を求めて、冒険と闘いに明け暮れるヴァン・ヘルシングだったが、彼が立ち去ったあとには、元の人間の姿に戻ったモンスターたちの死体が必ず残されていることから、モンスター・ハンターでありながら、警察にはお尋ね者として手配されている身でもあった。
そんな中、ヴァン・ヘルシングは、トランシルバニアへ向かうよう、バチカンから命令を受ける。
そこでは、ドラキュラ伯爵が邪悪な力を元に、世界を支配しようとしていたのだ。
代々、ドラキュラと戦い続けてきた、ヴァレリアス一族の最後の生き残り、王女アナとともに、ヴァン・ヘルシングは、ドラキュラ伯爵を倒すべく、城へと赴くが・・・。

吸血鬼ハンターのお話ということで、映画公開前に、佐野史郎さんが出ていた特別番組なども見て、もともと興味はあったのです★
でも、結局、映画館へ行くことは無かったのですが。
それで、今回、ビデオを借りてきて、見てみると・・・
とにかく、CG使いまくりの壮大なゴシック・オペラというか。
『ハムナプトラ』シリーズのスティーブン・ソマーズ監督ですから、そのスケールの大きさと、エンターテイメント性は言わずもがな。

黒ずくめのマントに、広いつばのついた帽子をかぶったヴァン・ヘルシングは、まさに、モンスター・ハンター。
彼を演じたヒュー・ジャックマンは、アクション俳優というよりも、『アクターズ・スタジオ・インタビュー』で御本人を見た限りは、正統派のミュージカル俳優ですよね。
歌もうまいし、ダンスも出来るし、トニー賞まで取っている、笑顔の爽やかな好男子。
そんな彼が演じたアウトサイダー・ヒーローは、演技力がしっかりあるからこその、渋い役どころになっていて、安心して見ていられるカンジ。

ドラキュラ伯爵は、いかにも、と言うほど、キザで気取っていて、ナルシスティックで、お耽美(笑)
(でも、個人的には、もう少し、美形でも良かったような気が・・・(笑))

『ハムナプトラ』でも、主要パーティが三人で、ボケ役のエヴリンのお兄さん(ジョン・ハンナ)が笑わせてくれましたが、今回、その役目に当たるのが、発明家で修道僧のカール。
ヴァン・ヘルシングとアナの二人にくっついてきて、足手まといになりそうでいながら、美味しいところを、かっさらっても行くんですよねえ。
彼を演じたのが、『ロード・オブ・ザ・リング』でファラミアを演じたデヴィッド・ウェンハム。
ファラミアとの正反対な役どころを、とてもコミカルに演じていて、笑わせてもらいました((^^;;
三人パーティでは、一人はいるお茶目な役ですが、彼がいることで、さらに楽しめるというか、身近に思えるというか。
ほら、あとの二人は美男美女のカップルだから★
ヒロインのアナは、その衣装がゴシック系で、とにかくカッコ良い!
ある意味、憧れの雰囲気ですねー。

キャラクター造詣は、お決まりの王道を押さえているカンジ。
もう、こういう設定の映画では、ストーリーは、どうでもいいんです((^^;;
CGを駆使した、その世界観や映像美で大いに楽しませてもらえれば。
とにかく、ゴシックなムード満点で、作り込んだ、見応えのある映像は、とても楽しめました。
本物のチェコの教会で撮ったという、ドラキュラ伯爵主催の仮面舞踏会のシーンも、シルク・ド・ソレイユの協力を得ただけあって、アクロバティックで、とても妖しさに満ちたもので。
このシーンだけでも、見る価値はあるんじゃないかな。

見て楽しめると言えば、アナを演じたケイト・ベッキンセールを始め、ドラキュラの花嫁たちも、スタイルが素晴らしく良い、グラマーな美人ばかりなので、ゴージャスな雰囲気が楽しめます★
ただ、花嫁たちは、よく、口が裂けていましたが(笑)

ドラキュラ映画は、映画の創成期から何度も撮られてきた古典的なテーマですが、ここまで来ると、さすがに、スゴイとしか言いようが無いですね。
ある意味、その世界を全て表現し尽くしたんじゃないかなあと思うほど。
CGって、ほんと、スゴイなあ。
きっと、この映像を見たら、過去のユニバーサルなどで、モンスター映画を撮っていたスタッフたちは、俺たちも、本当は、こういう映像を撮りたかったんだよ~!(><)と、泣いて悔しがるんじゃないでしょうか(笑)

そのダイナミックな映像と、心湧き踊る豪快な音楽に、スカッと出来る、エンターテイナー映画かな、と思います。
モンスター総出演な上に、アクション、サスペンス、ラブ・ロマンスあり。
(ただ、ちょっと気になったのは、一応、ヴァン・ヘルシングとアナとのロマンス物でもあると思うのですが、普通は、囚われとなった王女を救いに行くものなのに、途中、囚われとなったフランケンシュタイン(!)を救いに行くことに、何故か、いつにない意欲を燃やしてしまうヴァン・ヘルシング・・・。
その意気込みは何なの~っ((^^;;
相手が違うんじゃ・・・と思ってしまいました(笑))

繊細な映画も好きなんですが、こういうゴシックな世界観や色彩も、実は、とっても好きなのです~★
(ハード・ロック系というか、どこか、ヘヴィ・メタに通じるものもあったり・・・)

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◆映画『ヴァン・ヘルシング』 オフィシャル・サイト
映画のテーマとともに、雷鳴が鳴り響いております~(笑)
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by akiko_mama | 2005-05-22 18:45 | 映画
白いカラス
『白いカラス』
原題;The Human Stain
(2003年・アメリカ)

大学の古典文学教授であるコールマン・シルクは、ある授業で発した、たった一言の言葉が、曲解され、人種差別発言だと捉えられて、それが理由で職を失い、家庭すら失ってしまう。
初老の彼は、その後、ふとしたことで出会った若い女性、フォーニアと恋仲となり、彼女との情事にのめり込む。
フォーニアは、過去に虐待を受けたという傷を持ち、全てを喪っていた。
そして、コールマンもまた、ずっと、誰にも明かすことのなかった秘密を抱えていたのだが・・・。

主演がアンソニー・ホプキンス、共演には、ゲイリー・シニーズ、エド・ハリス(←やっぱり悪役だけど!(笑))という、私の大好きな俳優陣が勢揃いだったので、見てみました。
そして、フォーニア役は、ニコール・キッドマン。彼女の意思の強さを表すような視線が好きで、彼女もまた、大好きな女優さんの一人なのです★

俳優陣は、もう、言うことなしで、素晴らしかったのですが・・・。
フィリップ・ロスのベストセラー作品を映画化したという、この映画。
個人的には、ちょっと、題材がうまく消化されていないというか、ストーリーとして、随分、物足りなかったかなあ、という印象が・・・。


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つづきを読む
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by akiko_mama | 2005-05-21 12:40 | 映画
ゴスフォード・パーク
『ゴスフォード・パーク』
原題;Gosford Park
(2001年・アメリカ・イギリス・イタリア・ドイツ)

1932年11月。
イギリス郊外にあるカントリー・ハウス「ゴスフォード・パーク」には、貴族や映画人たちがパーティと狩りのために集っていた。
高価なドレスで着飾ったり、綺麗にプレスされたタキシードを身につけて、優雅に談笑する「階上の人々」。
屋敷の薄暗い階下では、執事やメイド、従者、料理人たちといった「階下の人々」が、主人たちのために、あれこれと忙しく立ち働いていた。
うわべの優雅さとは裏腹に、お互いに腹の探り合いをして、エゴを剥き出しにしながら、憎しみを露わにする「階上の人々」。
そして、忙しさの合間に、一息ついた「階下の人々」は、階上に集う貴族たちのゴシップ話に花を咲かせていた。
そんな中、屋敷で殺人が起こる。
殺されたのは、屋敷の主人、マッコードル卿で・・・。

名匠ロバート・アルトマン監督による、アガサ・クリスティを彷彿とさせるミステリー劇。
アカデミー脚本賞、ゴールデン・グローブ賞監督賞など、23の賞に輝いた作品です。

実際、アルトマン監督は、当初、「まだ殺人ミステリーは撮ったことがないから」という理由で、クリスティの原作を映画化したいという意向だったようです。
しかし、まだ映画化されていない原作を探してみても、目ぼしいものが見つからなかったので、それではと、オリジナル脚本で臨んだのだとか。
でも、英国貴族社会の豪華さと、その裏にある貴族たちの愛憎関係が皮肉っぽく描かれる群像ミステリーは、まさにクリスティそのもの。
そして、クリスティ映画には欠かせない、マギー・スミス(『ナイル殺人事件』や『地中海殺人事件』などに出演)まで出ているとなれば、これはもう!
他にも、ヘレン・ミレン(TVシリーズ『第一容疑者』で有名ですが、硬派で強い女性を演じるなら、この人、ということで、私は勝手に、イギリスの野際陽子さんだと思っています(笑))や、デレク・ジャコビ(TVシリーズ『修道士カドフェル』ですね)など、英国のみならず、アメリカ人俳優も含め、そうそうたる名優たちが、「階上」「階下」ともに総出演で、多くの登場人物たちを、とても個性的に演じています。
その点もまた、クリスティ映画に通じるところですよね。

でも、それらと違うのは、彼女の作品が、主に貴族たちにスポットを当てていたのに対して、こちらは、「階下」の人々を、より丁寧に描いているという点でしょうか。
実際、当時のメイド経験者や料理人経験者、元・執事たちが(いずれも80歳代でしたが)、アドバイザーとして現場について、俳優たちに細かい指示を与えていたとか。
だから、この映画で私たちが見ることのできる世界は、当時のものそのままなのですよね。
ただの多くの使用人ではなく、彼ら一人一人にも個性があり、それぞれのエピソードを抱えていて、「上」の人々とはまた違った世界が「下」にも、ちゃんとあることを、アルトマン監督は丁寧に描いています。
むしろ、この「階下」の人々をこそ、監督は描きたかったのだとか。

厳しい階級社会であった英国の姿が、この映画には、分かりやすく表現されているし、「上」と決してまじわることのない「下」の世界も、階級社会であり、使用人の中でも上下関係がはっきりと分かれているなど、当時の社会構造を窺い知ることが出来ます。

素晴らしい名優たちによる、渋い演技とともに、カントリー・ハウスにおける、貴族たちと使用人たちの日常にも触れることが出来て、見応えありです。


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◆映画『ゴスフォード・パーク』 オフィシャル・サイト


映画の雰囲気たっぷりで、楽しめます。
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by akiko_mama | 2005-05-20 09:39 | 映画
アナザー・カントリー
『アナザー・カントリー』
原題;Another Country
(1983年・イギリス)

1932年夏。
イギリスの、由緒正しい全寮制のパブリック・スクールでは、いずれも上流階級の子弟である学生たちが、将来のエリートになるべく、厳格な規則のもとで教育されていた。
最終学年を前にしたガイ・ベネットは、ある日、別寮の美青年ハーコートに一目ぼれしてしまう。
だが、当時、同性愛に対する世間の目は冷たく、また、同じ寮の学生が、同性愛の現場を目撃されたことを理由に自殺したばかりだった。
その事件で、学内は騒然とし、寮を取り仕切る最終学年のエリート集団もまた、神の教えに背く異端の学生を厳しく取り締まろうとしていた。
それでも、ガイは密かにハーコートと会う約束をとりつけ、以後、二人の密会が続く。
ガイは、最終学年をエリート候補として過ごし、学校を卒業すれば、ゆくゆくは外交官になるという夢だけを支えに、厳しい寮生活にも耐えてきた。
だが、そんな折、ハーコートとの仲が知られてしまい・・・。

英国の名門パブリックスクール、イートン校を舞台にした、この映画は、大人への道を前にした青年たちの青春と影を描いた、耽美映画の代表作だと思います。
(これと同種の映画としては、私の大好きなジェームズ・アイボリー監督による『モーリス』とか・・・)
この『アナザー・カントリー』、もとは大ヒットとなった舞台劇だったものを映画化。
実在のスパイだった人物をもとに書かれたお話です。
舞台では、ガイを演じたコリン・ファースが、映画では、ガイの親友で共産主義者のジャドを演じています。

理想の結婚』で、ルパート・エヴェレットが、滅茶苦茶カッコ良くなっていたのを見たあと、グッドタイミングというか、ちょうど、TVで久々に、この映画が放映されていたので、見てみたのですが。
初めて見たのは、もう、十五年以上も前かな?
今、改めて見てみて、また、感慨深いものがあったり。

貴族の子弟で、ゆくゆくは、外交官になるはずが、その性的嗜好ゆえに、昔から夢見てきた栄光への道を閉ざされてしまうガイ。
どこか大人になりきれていないけれど、もはや少年でもないという微妙な年代の、ガイ役を、ルパート・エヴェレットが演じているのですが、やっぱり、若い頃の彼は、ちょっと私の好みじゃないかなあ((^^;;
(昔も、そう思ったけど。でも、今の彼は好きですよー)
むしろ、ジャド役のコリン・ファースのほうが、声も渋く、痺れる雰囲気ですね(笑)
彼は、自分の主義を貫く、不敵でアウトサイダーなジャド役で正解だったと思います。でも、初めて、この映画を見たときには、彼が、のちに、これほど有名な俳優になるとは思ってもみませんでしたが★

やはり、いわゆる女性向けな映画なので、うっとりと、パブリック・スクールの美しい青年たちに酔いしれたい方にはオススメ★
決して、明るい映画ではないですが、いかにもイギリスらしい暗いトーンの中に、当時の退廃的な雰囲気が、色濃く滲み出ていて、地味ではありますが、好きな作品の一つです。


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今、発売されているDVDよりも、こっちのジャケットのほうが、いかにも、二人きりの世界、というカンジで好きだったり・・・。
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by akiko_mama | 2005-05-19 10:27 | 映画
オルランド
『オルランド』
原題;Orlando
(1992年・イギリス・ロシア・フランス・イタリア・オランダ)

16世紀末のイギリス。
エリザベス一世の寵愛を受け、「決して、老いてはならぬ」という条件とともに、女王から、大きな屋敷を拝領した若く美しい青年貴族オルランド。
詩と孤独を愛し、老いることもなく、男性から女性へと変貌を遂げ、四百年の時を生きたオルランドの流浪の物語。

昨日、↓で書いた通り、サリー・ポッター監督作品に興味が湧いたので、早速、今日、TSUTAYAで『オルランド』を借りてきて、見てみました。
原作は、ヴァージニア・ウルフ。
彼女の著作にも、以前から興味はあったのですが、難解だという噂のうえ、なかなか読む機会も無く。
でも、この作品のことは、不思議な幻想小説だという話だけは知っていて。

映画化は無理ではないかとまで言われていた、長編小説を見事に映像化した、この作品は、監督・脚本・音楽を担当した、サリー・ポッター女史の美意識が反映された、独特な味わいのある映画でした。
他の作品でもそうでしたが、監督は、音楽が映画の中で果たす役割を、とても大事に考えているように思います。
天使の歌声のように、高いファルセット・ヴォイスで歌われる曲が、華やかで退廃的な宮廷文化に彩りを添えています。(歌う天使役に、元・ブロンスキ・ビートのジミー・ソマーヴィルが出ていたり)

大寒波が襲ったロンドンの、氷が張った池の上で踊る貴族たちの煌びやかさ。
砂漠の中にそびえる、東方の王の館。
今までに見たこともないような場面や、美しくも幻想的な映像が、ふんだんに散りばめられています。
監督の美意識が、隅から隅まで行き届いている、そんな感じ。

原作が、幻想小説と言われる一つの理由は、昏睡のあと、オルランドの身体が男性から女性へと変化したからでもあるのですが、それは、つまり、「進化」なのかも知れません。
男性として、何百年生きてきても、満たされることが無かったオルランドが、女性になったことで、やっと手に入れる幸福。
この、両性を演じなければならない、難しい役どころに挑戦した女優、ティルダ・スウィントンは、冒頭、やはり、男装姿に違和感があったのですが(宝塚みたいには、なかなか、いかないもんだなあ、と思ったり)、段々と馴染んできて、むしろ、女性になった時こそ、逆に、彼女の男性的な部分が浮き彫りになったように見えました。
男性であり、女性。
そして、男性ではなく、女性でもない。
両性具有のイメージで語られる「オルランド」ですが、ドレスを身につけたティルダ・スウィントンの容貌を見て、つい、連想したのが、モナ・リザ。
モナ・リザも、ダ・ビンチが自らの容貌を重ね合わせて描いたという説もあり、どこか、「両性具有」の不思議な魅力を持っているからこそ、あれほど、昔から、人々があの絵に惹き付けられるのではないでしょうか。

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つづきを読む
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by akiko_mama | 2005-05-17 20:53 | 映画
耳に残るは君の歌声
『耳に残るは君の歌声』
原題;The man who cried
(2000年・イギリス・フランス)

1920年代のロシア。
ユダヤ人の少女フィゲレは、小さな村で、家族とともに幸せに暮らしていた。
父親が、新天地アメリカへと出稼ぎに出た矢先、暴漢たちが村を襲い、村は焼き尽くされる。
その悲劇から逃れた幼いフィゲレは、イギリスへと送られ、子供のいない家庭に里子に出され、そこでスージーという名前を与えられる。
言葉も分からない異国の土地で、スージーを支えたのは、彼女の透き通るような歌声だった。
やがて、学校を卒業したスージーはパリへと向かい、コーラス・ガールとして働くことに。
劇場で知り合ったジプシーの青年、チェーザーと恋に落ちたスージーだったが、パリにも、第二次世界大戦のナチスによる影が忍び寄っていた。
生き延びるため、ユダヤ人であることを隠さねばならなかったスージーは、パリから逃れて、アメリカへ向かおうとするのだが・・・。

主演のスージー役はクリスティーナ・リッチ、そして、ジプシーの青年チェーサーはジョニー・デップ。
もちろん、ジョニデが出ているから、この映画を見てみたのですが(笑)
本当に、どうして、この人は、こんなに小汚い(失礼((^^;;)ジプシー役がとってもお似合いになるのでしょうか。
人々に、最下層の流浪の民だと虐げられながらも、その胸の奥に確かなプライドと、研ぎ澄まされた野性の本能が息づいているのが手に取るように分かるのは、ジョニデ自身の、生来の素質なのか。
他の役者には、このあまりに自然な雰囲気は、たぶん、真似が出来ないだろうと確信してしまうほど。
彼の中に流れる、ネイティブ・アメリカンの血が、そうさせているのかも知れません。

この二人は、『スリーピー・ホロウ』でも共演していますが、全く違う役どころ。

そして、少女から女性へと成長しても、まだ、どこか、発育不良な様子を拭えないクリスティーナ・リッチ(役柄的に、彼女がそうふるまっているのだと思われますが)と相対して、パリで彼女のルームメイトとなるケイト・ブランシェットの大人な女性の色気と言ったら。
顔の作りの造作も派手で、大柄でスタイルもいいケイト・ブランシェットが身につける、戦前の豪華なドレスや衣装は、ちょうど、当時のハリウッド女優たちを彷彿とさせます。
女性には、この辺りも見応えありかな。

監督はサリー・ポッター。
この映画では、脚本だけでなく、音楽監修もしていて、このサリー・ポッターは、各方面のさまざまな才能を持っている人のようですね。
ヴァージニア・ウルフ原作の『オルランド』の監督・脚本を手がけただけでなく、『タンゴ・レッスン』では、タンゴの魅力にとりつかれた自らの体験を、監督・脚本・主演した上に、ヨーヨー・マのチェロをバックに主題歌まで歌ってしまっているとか。
今、ヨーヨー・マがマイブームなので、この映画もぜひ、見てみたいなあ(><)
(ちなみに、今、これを書いているBGMが、『ヨーヨー・マ プレイズ・ピアソラ』なのです)

音楽に関しても、造詣の深い、この女性監督が映画の全編に散りばめた、オペラの名曲の数々や、少女の儚げな歌声、そして、実際にジプシー・バンドとして活躍中のバンドが演奏する、悲しい民族音楽は、どれも、心に響いてきます。
決して明るい映画ではないですが、上質な佳作ではないでしょうか。


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by akiko_mama | 2005-05-16 09:55 | 映画
ヒート
『ヒート』
原題;HEAT
(1996年・アメリカ)

装甲輸送車を、仲間たちと共に襲い、高価な有価証券を奪ったのは、生涯、強盗を生業にしてきたニール(ロバート・デ・ニーロ)。
その事件を追うのは、ロス市警の敏腕警部ヴィンセント(アル・パチーノ)。
手掛かりを残さないニールのプロの手口は鮮やかで、当初、捜査が行き詰るが、やがて、ちょっとしたきっかけから、ヴィンセントはニール一味のことを知り、探り始める。
一方、ニールは、偶然、ある女性と知り合い、恋に落ちる。
次の仕事を終えれば、二人で他の国で暮らそうと心に決め、最後のヤマに取り掛かったのだが・・・。
社会派のマイケル・マン監督が、ロバート・デ・ニーロと、アル・パチーノという2大スターを初競演させた、アクション大作。

タイトルこそ、「ヒート」だけれど、そんなに熱さを感じさせるという印象は無く、むしろ、すでに、アクションを演じるには、若くはない二人の名優が静かに激突している、そんな映画かな。

そして、強盗グループのリーダーとはいえ、インテリ肌のニールが、自分の素性を隠して、若い女性と恋に落ちるあたり、男の、甘くロマンティックな(都合の良い)夢を丸ごと投影しているというか。
この二人の関係よりも、むしろ、ヴァル・キルマーと、アシュレー・ジャッドの若い夫婦のほうが、現実味を帯びていた気がします。
若さゆえ、互いの感情をぶつけあって、憎しみすら顕わにしながらも、本当は深く愛しているという。
(特に、アシュレー・ジャッドの演技が、これまた、心憎いというか、切ないほどでした)

でも、やはり、この映画で見るべきものは、演技派である2大スターのぶつかり合いでしょう。
敵対する者同士として出会うこととなった、二人の対決シーンは、独特の緊張感が張り詰めていて、さすがとしか言いようがありません。

デ・ニーロが演じたニールは、実在した同名の犯罪者、ニール・マッコーリーをモデルにしているんだとか。
警察からの視点だけではなく、犯罪者の立場をも描くことで、物語に深みを与え、双方の悲哀を描いています。
まさに、a0019299_222849.jpg男の矜持というやつを、くすぐる映画なのではないでしょうか。

◆HEAT オフィシャル・サイト
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by akiko_mama | 2005-05-15 22:02 | 映画