THE・少女マンガ! ~水野英子
2005年 09月 02日
『BSこだわり館 THE・少女マンガ! 作者が語る名作の秘密』
星のたてごと ~水野英子~ (NHK-BS2) 以前、『BSマンガ夜話』に「星のたてごと」が取り上げられたときにも、思ったことですが、このマンガは、少女マンガの第一歩を決定づけた、記念すべきマンガなんだなあ、と。 (ちなみに、その晩の『マンガ夜話』では、なんと、FAXが3枚しか来なくて、うち一枚は私の絵でしたが・・・) でも、昔の私には、そんな意識は全く無くて、何も知らないまま、幼少の頃、この「星のたてごと」(一番初期の朝日ソノラマ版)を買ってもらっていたんですよね。 それが、実は私が生まれる、ずっと前に書かれたマンガだったことも知らずに。 「星のたてごと」は、私にとっても、初めて買った少女マンガのうちの一つだったんじゃないかな? それまでは、アニメを見て、「海のトリトン」を買ってもらったぐらいだったから。(←でも、これは、アニメとは全く違う展開の、大人向けのマンガだったんですが(><) だって、トリトンがお父さんになって、ピピとの間に7匹の子供が生まれて、最終巻では、その子供のうちの1匹が主人公になっちゃうんだもん~っ) いや、まあ、トリトンは、この際、どうでもよくて((^^;; この番組の中のインタビューで、里中満智子先生や、竹宮恵子先生が、まだ小学生の頃に、この「星のたてごと」を読んで、とても影響を受けたという話を聞いて、ますます、すごいマンガだったんだ、と改めて思った次第です。 もちろん、水野先生が、あの「トキワ荘」に唯一、女性のマンガ家として住んでいた方、という点だけでも、驚くべきことではありますが★ 絵を描くのは、小さい時から好きだったらしく(4歳のときには、ウルトラマンを描いてた)、ちょうど、「ベルばら」ブームの頃、当時、小学四年生くらいだった私も、その華麗な世界を真似て、綺麗なドレスのお姫様の絵を、いっぱい描いたりしていたのは覚えているのですが、「星のたてごと」を読んだのは、まだ、小学校低学年だったので、その絵を真似て描いたことは一度も無かったと思うんですよね。 だから、『マンガ夜話』用にFAXを描いて送るときも、はて、いったい、誰を描けばいいんだろうと思って(笑) リンダとか、ユリウスは、私にとっては、真似して描く、というキャラじゃなかったし・・・。 それで、登場人物の中でも、昔から大好きだった、リンダのお父様、伯爵さまを初めて描いて送ったという・・・。 地味な選択だったなと、あとで思いましたが(笑) だって、昔、このマンガを読んでいたときも、ユリウスにときめいたりは、全然しなかったんだもん~((^^;; むしろ、一番、ときめいて、好きだったのは、実は、リンダのために、怪我をして囚われ、鞭打たれてしまうお父様、シャロット伯爵だったのでした・・・。 そうか、この頃から、私のオヤジスキーが芽生えていたのね! (小学校低学年の頃からの、肝いりだったか) 次に好きだったのは、ユリウスの義兄だったかな? うーん、やはり、王道には行かないなあ・・・((^^;; でも、私の中では、今、改めて考えてみると、「星のたてごと」からは、絵よりも、むしろ、その壮大なストーリーに、大きな影響を受けたかな、と思うのです。 もちろん、絵も、スクリーン・トーンをほとんど使用しない、シンプルな線なのに、ゴージャスで、古代の歴史ロマンスという世界がとても素晴らしく、描かれているマンガなのですが。 竪琴を奏でる、旅の吟遊詩人・ユリウスと、伯爵の娘、リンダとの恋。 でも、彼は、実は、敵対する隣国の人間であり、さらに、時をさかのぼれば、神の娘であったリンダが、傷つき、死の国へ赴こうとしていた前世でのユリウスに恋したことから、始まっていた。 そして、父神の怒りに触れて、地上に落とされたリンダには、ある使命が課せられていて・・・。 黄金の指輪を巡る、壮大なロマンス。 国を操ろうとする大人の思惑により、何度も引き裂かれてしまう二人の恋人の運命と、二転三転していく物語が含有する、圧倒的なスケールの大きさ。 この、とても奥深いストーリーが、まだ、「少女マンガ」というものが、生まれてまもない、1960年という時代に発表されたということが、後の少女マンガ界を担う世代に大きな影響を与え、「少女マンガ」の枠を大きく広げたというのも、頷けることです。 むしろ、それまでの「少女マンガ」とは一線を画した、このマンガが彗星のごとく登場したということ自体、奇跡のような気がしますが。 その記念すべき不朽の名作といわれる作品を、何も知らなかったとはいえ、幼少の頃に読んでいて、それが、幼かった頃の自分に大きな影響を与えて、今でも、とても深い場所で息づいているというのは、嬉しいことです。 やはり、私にとっては特別な作品というか、今も、あの絵を見ると、他の作品にはない、ときめきを感じてしますもんね(><) 小さいときには、このストーリーに似たお話を勝手に作って、よく、一人でお人形遊びもしていましたし☆ そうやって、何度も、このお話を自分なりになぞって、無意識に反芻していたんでしょうね~。 そして、「星のたてごと」掲載から、45年が経った今。 65歳になられた水野先生は、今も、まだ、丸ペンを握って、ケント紙に綺麗なイラストを描かれていました。 65歳という年齢で、マンガを描いてらっしゃる女性って、他にいるでしょうか! そのお年でも、全く、絵柄は変わっていなくて、今も、昔と変わりなく、繊細で、華麗なロマンスに彩られた絵を描いてらっしゃって、本当に驚きでした。 まるで、時間が止まってしまったかのような。 普通、マンガ家って、絵がどんどん変わっていくものなんですよね。 慣れからか、ベテランにもなると、大まかな、崩れた絵になってしまうというか。 でも、水野先生は、二十年ほど前の絵柄と、全く変わってない。 ただ、今の出版業界では、水野先生のマンガを掲載しようという雑誌は、残念ながら無く、連載途中で掲載誌が廃刊となった『ルードヴィヒ二世』も、2巻で刊行が止まったままだとか。 そんな状況の中で、水野先生は、どこかに掲載される予定もないまま、今も、イラストやマンガを、マイペースで描き続けてらっしゃるそうです。 この番組で、それを知り、この方は、マンガ家というよりも、芸術家なんだなあ、と思いました。 自分が描きたいもの、つまり、夢やロマンスに満ちた世界を永遠に描き続ける人なんだ、と。 出版形態も、さまざまに変容しつつある今日、少女マンガの原点とも言うべき、水野先生の作品を、雑誌掲載でなくとも、何らかの形で、もっと読んでみたいって人は、私のほかにもいるんじゃないかな、と思うのですが。 (先生の、ほとんどの作品が、現在は入手不可能か、絶版状態なので) これだけ描ける人を、このまま、放っておくのは、不遜ながら、もったいないと思うし、大きな損失なんじゃないかと思うのです。 数十年前とは違い、マンガは細分化され、もう、子供のものだけじゃなく、大人に向けて描かれたマンガも、ちゃんと成立している時代です。 「星のたてごと」を読んで育った世代、そして、そのマンガを知らない世代にも、もっと、水野先生の活躍を見てもらえればいいのにな、と思いました。
by akiko_mama
| 2005-09-02 09:48
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